新卒の就職活動で大手企業というと倍率が高く難易度も高いイメージを抱く方が多いと思いますが、障がい者採用ではそうとは限りません。
この記事では障がい者採用こそ大手企業の内定を取りやすい理由と、
障がい者こそ大手企業をお勧めしたい理由についてまとめたいと思います。
- 障がい者採用で大手企業に入れるの?
- 障がい者採用は大手企業と中小企業どちらがおすすめ?
障がい者採用は大手企業に入りやすい
近年、大手企業の障がい者採用への注目度は高く、1人事目線でも障がい者採用で大手企業を狙うなら今!という流れが来ていると感じます。
障がい者採用を行うことで企業が得られるものは、
大手企業は障がい者採用を拡大推進する見込み
- ①ダイバーシティ・インクルージョン文化の醸成
- ②新たな視点やアイデアによる事業推進
- ③労働市場拡大による安定した従業員の確保
- ④顧客やステークホルダーからの信頼獲得
等が挙げられます。
特に①~③は直近での世の中の変化が影響していて、
①ダイバーシティ・インクルージョン文化の醸成については近年急に始まったようなもので、1企業の人事担当としては「こんなに急になじみのない横文字が流行することがあるのか…」と驚くほどです。
②新たな視点やアイデアによる事業推進は事業がある程度習熟している大手企業において、継続的な成長を続けるには画一的な価値観での事業/サービス企画からの脱却が求められています。例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目度を上げてどこの会社でも取り組まれているように、既存ビジネスの改革が推進されつつあります。
また、③労働市場拡大による安定した従業員の確保という観点でも、少子高齢化による労働人口減少に対する打ち手として障がい者採用が必要になります。近年急に始まったものではありませんが、長期的に見て重要度が徐々に上がってくると想定できます。
大手企業目線での障がい者採用のメリット詳細は、以下の記事にまとめていますのでぜひご覧ください。
これらの背景より、大手企業は障がい者採用で得られるメリットが大きく、対外的にも障がい者採用の推進がより求められる状況になっています。
法定雇用率で定められた雇用人数が多い
日本国内の企業は従業員数の2.3%の人数の障がい者を雇用することが義務付けられています。これは法定雇用率という国が定めた一律の基準で、事業内容や組織体制に関わらず民間企業に適用され、達成できない場合には行政指導への対応や納付金の支払いが必要となります。
雇用率は一律2.3%なので、1,000人の会社であれば23人の障がい者雇用、10,000人の会社であれば230人の障がい者雇用が必要…というように従業員数が多いほど雇用すべき障がい者の人数も増えていきます。
有名な大手企業として例を挙げると、
- ANA :従業員数約1.2万人→276人の障がい者雇用が必要
- JR東日本 :従業員数約4.6万人→1058人の障がい者雇用が必要
- トヨタ自動車:従業員数約7万人→1610人の障がい者雇用が必要
このように、何百・何千人の規模での障がい者雇用が義務付けられているのです。
一方でこれらの企業で働きたいという意欲のある障がい者の人数は多くないので倍率が低くライバルは少ないです。
世の中の動向的に大手企業が障がい者採用に力を入れる必要性が高まっていることと、単純に倍率が低いということから、障がい者採用は大手企業を狙いやすいと言えます。
障がい者採用で大手企業を目指すべき理由
「障がい者採用は大手を狙いやすい」と分かったところで、実際に中小企業よりも大手企業を狙うべきなのか?一般採用・障がい者採用双方の観点を踏まえて説明します。
給与や待遇が良い
給与や待遇の点では障がい者採用/一般採用に関わらず言えることですが、一般的に大手企業の方が給与が高いです。
例えば大手企業で障がい者採用に力を入れている会社だと、
障がい者雇用率ランキング(東洋経済)上位で「大手企業」には入らないであろう会社だと、
あくまで3社ずつピックアップしたに過ぎないので例外はあると思いますが、こんなに顕著に違います。この金額差が10年、20年と続いた場合を想像してみてください。
障がい者のサポート体制が手厚い
大手企業の方が人数規模も大きいので、必然的に障がい者を受け入れる部署にも全社の障がい者をサポートする人事担当者も人数が多いです。実際、私の会社の障がい者採用チームは5名体制でしたが、この人数を障がい者採用の施策に割けるのは人事が100人規模でいるような会社じゃないと難しいと感じます。
人数が多い程もちろん手も回りますから(忙しかったですが。)、1人別の候補者/内定者フォローや配属先への個別説明なども実施できていました。
法定雇用率を達成している前提であれば、障がい者の雇用実績が多いということも大事です。障がいの内容は人それぞれですので、数名受け入れた実績があるからと言って障がいのサポートに慣れているとは限りません。常に数百名~千人規模で雇用している会社であれば様々な障がい内容に対応していたはず、例えば聴覚障がい1つとっても様々な聞こえ方の人の人に対して複数のサポートツールを使いこなして対応してきた実績があるはずです。
また、人件費や障がいのサポートに必要な施設を揃えるにもお金がかかるので、資金が潤沢にあることも大事です。
まさにヒト・モノ・カネが多い大企業が圧倒的に安心です。
障がい者雇用におけるトラブルが少ない
悲しいことに一部、職場での障がい者への差別や虐待等が発生し、毎年一定数が通報されていることも事実です。ですので、適切なサポートが受けられるかだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクを下げることも大事だと思います。
通報が発生している企業の人数規模を見てみると、7割以上が従業員30名以下の中小企業です。
こう見てしまうと大企業の方がリスクが少なく、万が一何かあったときも通報窓口の体制が確立されているので安心と感じてしまいます。
障がい者採用こそ大手企業を狙うべき
障がい者の就活において大手企業は入りやすく、狙い目だと言えます。大手企業は障がい者雇用のメリットや法的な枠組みの影響を受けやすいので、必然的に障がい者採用を積極的に行う流れができています。
また、障がい者採用はどのみち1人別の個別での対応/選考が求められるという特性から、大企業でも中小企業でも選考プロセスに大差はないと考えられます。大企業だから「選考が大変」「集団でおこなう面接やディスカッションが多くある」「書類など序盤で絞られて必要以上に落とされてしまう」といった一般選考にありがちな懸念は少ないです。
倍率が高そう、自分には難しそう、といった理由だけで遠ざけず、ぜひ積極的にチャレンジすることをおススメします。