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大手企業はなぜ障がい者採用に注力するのか

国民的に名前を知られているような大手企業のほとんどが
障がい者採用に力を入れています。

人事 まちこ
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仕事で障がい者採用に携わるまでは、こんなにどの企業も力を入れて取り組んでいると知る機会がなかったので驚きました。


母数が少なく難易度が高い、コストも工数も一般採用より多くかかるのに
なぜ大手企業は障がい者採用に力を入れるのか?
その背景や企業目線でのメリットについて詳しくご説明します。

この記事はこんな疑問を持つ人におすすめ!
  • 障がい者は世の中の割合としては多くないのに、
    なぜ大手企業はみんな障がい者採用をしているの?
  • 大手企業は障がい者採用に何を求めているの?

大手企業が障がい者採用に注力する理由

大きく分けて2点あります。
1つめは障がい者を雇用することによる、定性的効果があるからです。この記事では企業文化や事業への影響、対外的なブランド力向上などを「定性的効果」と呼んでいますが、これらは大企業だからこそ重視したいポイントです。
仮に~30名規模でサービスが1つ2つのベンチャー企業であれば、少人数のため望む企業文化を醸成しやすいですし、企業名のブランドや知名度というよりもサービス内容で市場で戦っているという側面も強いため、大企業と比較して文化情勢やブランド力に対する重視度は高くありません。

2つめは国に法定雇用率を定められているからです。対象者従業員を43名以上雇用している企業。よって、大手企業は業界や組織体制に関わらず、障がい者の雇用率という一律のKPI(数値目標)を持たされているのです。

人事 まちこ
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次のセクションからはこの2点を分けて、それぞれ詳しく説明します。

障がい者採用の定性的意義

企業文化・事業への影響・対外的なブランド力向上などの「定性的効果」についてどのようなものがあるか、ご説明します。

企業内のダイバーシティ・インクルージョン文化の醸成

企業のダイバーシティ・インクルージョン(多様性と包括性)の文化醸成において、障がい者の雇用は重要です。この後に出てくる多岐にわたる項目へも、多様な人材が活躍できる文化は寄与しています。
ダイバーシティ推進の検討における「多様な人材」の中でも、障がい者はハンディキャップがあり活躍できる環境を整えることが難しいと考える企業が多く、障がい者でも活躍できる環境がある=障がい者以外のマイノリティ(性別・年齢・国籍・・・)な人材も活躍できる環境である、という見方もできます。このように障がい者の活躍はダイバーシティ推進において重要で難易度の高い項目となります。

新たな視点・アイデアによる事業影響

障がいのある方が経験してきたことや見ている視点は誰もが持っているものではなく、多くの人とは異なる観点を提供します。これらが課題解決への新たなアプローチ方法や新規事業/サービス検討時の新たなアイデア創出につながり、事業へのポジティブな影響もあります。

労働市場拡大による従業員確保

日本国内は少子高齢化により15~64歳の人口が、そして労働人口が減少傾向にあります。

引用元:厚生労働省HP

過去には障がい者が健常者と同様に働くことは難しいと考える企業も少なくありませんでしたが、実際には適切なサポートがあれば個々のスキルや経験を発揮しながら活躍することができる障がい者も多くいます。「できないと思い込んで受け入れない」「サポートの仕方がわからないから受け入れない」という考えを撤廃して間口を広げて雇用することが、企業にとって長期的に見た従業員の安定確保につながります。

顧客やステークホルダからの信頼を獲得

障がい者雇用状況の社外開示によって社会的責任を果たす姿勢を示すことができ、顧客や株主などのステークホルダーからの信頼を得ることができます。
例えば以下の画像は日本を代表する大手企業、トヨタ自動車(株)が投資家向けに降下しているサステナビリティレポートの抜粋です。

引用元:トヨタ自動車(株)公式HP レポートライブラリ

障がい者の雇用数や障がい者の働く環境について詳細に公開されており、大手企業こそこのような情報開示が重要と捉えられていると分かります。

人事 まちこ
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私の会社でも1年に一度このような情報開示をしており、レポート担当者から障がい者雇用について色々と聞かれます。投資家からのニーズも高いのか、年々求められる情報量や質が高まっていてけっこう大変。

法定雇用率で最低雇用人数を義務づけられている

こちらは定量的に絶対的に義務付けられている事柄です。前述の定性的な効果を踏まえて国が策定しているのですが、結果的にこの法定雇用率の達成に追われて四苦八苦している企業が多数です。

法定雇用率とは

日本国内では障がい者雇用の推進を目的として、一定規模以上の従業員数を抱える企業は国が定めた一定の障がい者雇用の割合を達成することが求められています。これを法定雇用率といい、厚生労働省にて以下のように詳細に定義されています。

引用元:厚生労働省 障害者雇用率制度の概要

2023年8月時点での民間企業の法定雇用率は2.3%、つまり従業員を43.5人以上雇用している企業では、障がい者を1人以上雇わなければなりません。1000人の企業では23人以上雇用しなければなりません。

人事 まちこ
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世の中の母数を考えるとこれは相当ハードルが高い…

厚生労働省の発表によると、法定雇用率の未達成企業数は5.5万社を超えているそうです…。

法定雇用率が達成できなかったらどうなる?

法定雇用率を達成していない企業はハローワークからの行政指導が入り、雇用率を達成するための計画の提出を求められます。また、従業員数が100名を超える会社は一定金額の納付金を国に支払う必要があります。

障害者を雇用するためにはビル施設や職場環境の改善/整備、障がい者専用の雇用管理等が必要となるため、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴います。よって、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減して、企業間の負担の公平を図るために障がい者雇用納付金が設定されています。
法定雇用率が達成できた企業はこの納付金をもとにした助成金を受けることができます。

引用元:厚生労働省 障害者雇用率制度の概要

法定雇用率を達成していない企業でも、障がい者雇用に関する取り組みや雇用している障がい者へのサポート状況によっては、納付金が軽減される場合があります。
総じて、法定雇用率を達成できなかった企業は、納付金を支払うことで法的な要件を満たすことになりますが、企業としては納付金の支払いではなく障がい者雇用を推進することで社会的責任を果たす姿勢を示すことが求められます。

人事 まちこ
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とは分かりつつ障がい者採用の難易度の高さから、雇用に注力せず始め方納付金を払うと腹をくくっている企業もあるのだとか…

大手企業こそ障がい者採用が重要視されている

大手企業を取り巻く環境を考えると、今後更にダイバーシティも普及していき企業でも文化情勢が求められたり、更なる成長には画一的な事業/サービスからの脱却も必要。また、本記事では触れていませんが技術の進化に伴い障がい者へのサポート方法も進化し、雇用のハードルも徐々に下がっていくと思われます。国が定める法定雇用率も直近数年でじりじり引き上げられています。
この状況は就職を予定している障がい者にとってはポジティブな変化です。障がい者雇用推進がもたらすポジティブな変化に期待しつつ、しっかり対策をして就活に臨みましょう。

ABOUT ME
人事のまちこ
都内在住の30代、 大手のザ・日本企業で10年以上人事をしています。 障がい者採用は一般的な採用活動とは異なり、 様々な採用業務を経験した私にとっても特殊で奥深い世界。 それらの裏側を知ってもらうことで 障がい者の就活を不安なくポジティブに進められるよう 情報発信をしています!